あなたと、あなたの大切な人を守る注射。HPVワクチン入門
2025年 5月 27日

予防できる「子宮頸がん」
「がんは予防できない」と思っていませんか?
実は、子宮頸がんはワクチンと検診で予防ができるがんです。
その主な原因は、性交渉で感染するHPV(ヒトパピローマウイルス)。
特に2023年から定期接種の対象となった「9価ワクチン(シルガード9)」は、子宮頸がんの原因ウイルスの80〜90%を防ぐとされています。
WHOも接種を推奨し、海外では接種率80%に達する国もあります。
一方日本では、かつて副反応への不安が広がり、接種率が一時70%から1%未満まで落ち込みました。
今では国も接種を再推奨し、安全性と有効性があらためて確認されています。
この記事では、HPVワクチンの効果や費用、世界の事例、そしてなぜ男性にも関係があるのかを、わかりやすく解説します。
正しい情報を知ることが、あなた自身と大切な人の未来を守ることにつながります。
ぜひ最後まで読んで、HPVワクチンについて一緒に学びましょう。
HPVとは?
HPV(ヒトパピローマウイルス)は、主に性行為を通じて感染するウイルスで、一生のうち約8割の人が一度は感染すると言われるほど一般的なウイルスです。
多くは自然に消失しますが、一部の型はがんの原因になります。10人に1人の割合でHPV感染が原因で細胞に異常をきたすことがあり、特に高リスク型HPVは以下のがんの発症に深く関わっています
女性:子宮頸がん、膣がん、外陰がん
男性:中咽頭がん、肛門がん、陰茎がん
男女共通:尖圭コンジローマ(良性のいぼ)
日本では、毎年約1.1万人の女性が子宮頸がんにかかり、約2,900人が亡くなっています。
そして、先進国では子宮頸がんの患者数は減り始めていますが、日本では2000年以降の子宮頸がん罹患率、死亡率は増加しているというデータがあります。
HPVワクチンの効果と種類
HPVワクチンは、HPVの感染を予防し、関連するがんの発症リスクを低減します。
日本で承認されているワクチンには、2価、4価、9価の3種類があります。
2価ワクチン:HPV16型と18型を対象。
4価ワクチン:HPV6型、11型、16型、18型を対象。
9価ワクチン:HPV6型、11型、16型、18型、31型、33型、45型、52型、58型を対象。
2023年4月から、9価ワクチンが定期接種に追加され、公費で接種可能となりました。
【男女別】HPVワクチンの効果と費用
女性
● 効果
主に子宮頸がんの予防が目的です。現在日本で使用されている「シルガード9」は、子宮頸がんの原因となるHPV型の約90%以上をカバーできるとされています。
● 対象
日本では小学6年~高校1年相当の女子が定期接種の対象(公費・無料)です。
また、1997年度から2008年度生まれの女性で、2022年4月1日から2025年3月31日までにHPVワクチンを1回以上接種した方は、2026年3月31日までに残りの接種を公費で完了できます。
● 費用(任意接種の場合)
公費対象外の年齢(成人女性など)では自己負担となり、
費用の目安は:
1回あたり:2万円~3万円
合計3回接種:約6万~9万円
※自治体によっては助成金や再接種支援あり。
男性
● 効果
男性自身のがん予防(中咽頭がん、肛門がん、陰茎がん)とパートナーへの感染防止が期待されます。特に、中咽頭がん患者の約70%はHPVが原因とも言われており、男女ともに関係する問題です。
● 対象
日本では、男性へのHPVワクチン接種は任意接種となっており、全額自己負担です。
● 費用
費用は、3回接種で約5万円程度です。
一部の自治体では、接種費用の助成を行っている場合があります。(例:東京都港区、名古屋市など)
副反応と安全性
HPVワクチンの接種後に見られる主な副反応には、接種部位の痛みや腫れ、発熱、頭痛、倦怠感などがあります。
これらの症状は通常、数日以内に自然に回復します。
重篤な副反応はまれですが、万が一健康被害が生じた場合には、予防接種健康被害救済制度の対象となります。
他の国ではどうしてる?
■ アメリカ
・2006年に女性向けに導入後、2011年から男性にも推奨接種
・11~12歳での男女ともに定期接種が基本(保険適用)
・成人男性でも26歳までなら保険で接種可能
■ オーストラリア
・2007年に女子へ導入、2013年から男子も定期接種
・世界初の「子宮頸がん排除国」を目指しており、学校での集団接種を行う
・女性の接種率が81.8%、男性が78.8%と男女ともに高い接種率
■ イギリス
・2019年から12~13歳の男子にも無料接種を開始
・女子と同様に学校での集団接種が行われている
男性も、知って・考える時代に
HPVワクチンは「女性のもの」ではありません。がん予防・感染防止という観点で、男女ともに関係する重要な医療対策です。
自分自身の健康、そしてパートナーを守るためにも、正しい知識を持ち、接種を前向きに検討してみてください。特に10代・20代の若年層では、接種による予防効果がより高いとされています。
HPVワクチンは、子宮頸がんをはじめとするHPV関連疾患の予防に有効な手段です。
定期接種の対象となる年齢の方は、公費での接種を受けることができます。
また、任意接種となる男性や対象年齢を過ぎた女性も、接種を検討することで、自身とパートナーの健康を守ることができます。